27 Jul
27Jul

あなたしかいない。

どうしても、どうしてもあなたじゃないとだめ。


最近、たけのこ食べると、少し不思議な感覚がおとずれる。

中目黒の病院に行って、お医者様と向かい合って、


「最近、たけのこ食べると喉がはしかいんです」

「・・・はしかい?」


だ!か!ら!この絶妙なかゆみ!腫れ!喉の違和感!

どうしても、どうしても阿波弁の「はしかい」じゃないと表現できないんですって!!!


この方言がない地域は、どうやってその現象を表現しているんだろう、と思う阿波弁があります。絶妙なニュアンスを、この方言だけが正確に表しているのでは?と思う。


最近大好きなたけのこを食べるのがちょっと怖いのはさて置き、実際問題、東京の病院では、喉が「はしかい」ことをどう表現したらいいのでしょう。ひょっとして東京の人は喉が悪い時、「むずがゆい」「痛がゆい」もしくは「痛い」しか感じないのでしょうか。あの喉の奥から立ち上がってくる「はしかいいいい!」という感情を、東京の人は持ったことがないのか!?


本ブログの記事「あわべんのおとしあな」で、以前申し上げた「立ちって」もその一つ。

「むつこい」も「まけまけいっぱい」も、わたしのそれなりな青春を彩っていた地元の言葉達は、今でも、まさにそうとしかいいようのない気持ちを閉じ込めているはずです。


とはいえ、わたくしもいちおう、立派な成人。

曲がりなりにも、必要な時には標準語を話し、腹を立てても「はがいたらしい!」などと言わず、それどころか「ローンチはリスケですか?良きですー、こっちはこっちでもんどきまーす!」などと、ギョーカイな単語を危なっかしく振り回しながら、ちゃんと生きているのです(なんの「ギョーカイ」なんだろう)。


それは、普段それぞれの仕事をしながら、全国各地より集まった『ぞめき』のメンバーもきっと同じこと。

ところが、時々、チームのみんなの言葉にも、ちらっとそれぞれのお国言葉が顔を出してくる。


題して、おとしあな、全国編。


きっと、その人にとって「そうとしか表現できない」言葉があるのです。


制作・犬飼女史の場合。

徳島生まれ、しかし岡山の長い彼女は、上手に阿波弁を中国方面にスライドさせています。

2人のお子さんは岡山生まれ。犬飼が子犬飼達を叱る時は、ゆっくりとした口調で「いけんよ、そんなことしとったら、いけんのよ」と諭している。ある種、学生時代には想像できなかった姿です。


ですが、本当に状況のやばい時、犬飼は早口で「あかん、あかんな」という。


そして「あかん」が出るやいなや、犬飼はものすごいスピードで動き始め、状況が「いける」ようになるまで、持てる全てを出し切るのです。できる女、犬飼。


彼女の「いけん」と「あかん」は、黄色信号と赤信号のようなものかもしれません。


第1話撮影監督・地村さんの場合。

普段、地村さんはゆるい関西イントネーション(標準関西弁)で喋っていますが、あれは確か、みんなで「今までで一番痛かったこと」について喋っていた時。


地「僕、ほたえとってフェンスに顔から突っ込んで、前歯全部折ったんですよ」


ほたえとって。


関西経験のあるメンバー以外、きょとんとした表情ですが、確かにそんな大惨事になるには、「ほたえとった」以外の状況が思いつきません。

しかし「ほたえる」、たまたま、阿波弁にきれいにフィットする言葉があります。翻訳すると、


僕、あばさかんりょって、フェンスに顔から突っ込んで、前歯全部折ったんですよ。


あばさかんりょったんか、ほらごっつい勢いだっただろうなあ・・・。

どちらも標準語に直してしまうと「ふざける」みたいな意味になってしまうのですが、ちょっとやそっとでは止められない勢い、前歯くらいは持って行ってしまう強さ、というものが「ほたえる」「あばさかる」にはあるような気がします。


仕上げに、またも第1話助監督・清本さんの場合。

昔のブログ記事のとおり、最も徳島が長いはずの清本さん、チーム内では、なぜか綺麗な標準語しか喋ってくれません。ところが、


清「車から機材下ろして、ブルーシートは適当に『ひらげれる』?汚すとあとで『たためれない』から気をつけて」


そうです、標準語を喋っていても「広げる」は、きっぱりくっきり「ひらげる」と発音しています。

からの、流れるように見事な『ら抜き』、畳みかける『れ足す』!やはり阿波男であった…!


標準語基準では間違いと言われてしまう「ら抜き言葉」「れ足す言葉」ですが、県内ではやはり「食べれん」「読めれる」と使った方が意味の取り違えが少なくやりとりがスムーズなはずです。普段会社員としてご活躍なさっているさまが実にうかがえます。


※広げる→ひらげるについては、ざっと調べたのですが、特に阿波弁というデータが見当たりませんでした。とはいえ、川人のまわりの地元人も「ひらげる」派が多いような感じはあります。


コミュニケーションに時々混じる「それしかない」お国言葉。なんとなく他人様の秘密をのぞいたようで、どきどきしますね。


シリーズプロデューサー・作曲家 川人千慧

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