高校1年生の秋のある日、4時間目のチャイムに食い気味で校内放送が入った。
「103HR犬飼佑子さん、今すぐ職員室に来なさい。繰り返します。…。」
早々と教科書をしまい、お弁当を取り出し中だった私に一斉に注がれる視線。
当時結構めんどくさい系統の問題児だった私は「あれがバレたのか、それともあっちか。」と、それぞれの謝り方を思案しながら「気を強く持て」「骨は拾ってやる」というクラスメイトの声を背中に聞きながら職員室に向かった。
「あの…先程呼ばれました犬飼ですっ!」
と、挨拶すると、
「おい、こっちこい。」
と、生徒指導の先生(強面男)。
「はいっ!」
と、ドキドキしながらでもそれを表情には出さずに机の前まで行った。
「これ、弁当箱。お父さんが届けてくれたよ。」
と、我が家のお正月の御節の三段重を風呂敷で包んだものを手渡された。
「あーっ!!」
時は昨日に遡る。お家がナシ農家のAちゃんが、でっかいタッパーにいーっぱい豊水梨を持ってきてくれて、クラスの皆でごちそうになったのだ。
そして、我が家は庭に柿の木があるため、「明日は私が柿持ってくるけん!」と言って、それを伝えて乗り気になった母が「ようけあるけんいっぱい持っていき!」と、三段重いっぱいに柿を切ってくれたのを…家に忘れていたのである。
もう忘れたままにしておいてくれてもいいのに、仕事に行く途中に私の通う学校があるため父が届けてくれたのである。
「犬飼の弁当箱でっかいなぁ!」
「あ…いや、あの、違うんですけど…違わないんですけど。」
周りの先生はクスクス笑っているし、教室に帰る道すがらも「なんか犬飼でかい包みを持ってる。」みたいに見られるし。
…。
「お父さんが柿届けてくれたんじょ~!」と教室を開けたら「わーい!」という歓声と拍手が起こったので、まぁ良しとするか。
柿食えば 思い出すんだ 三段重
制作(現地ボランティアスタッフ) 犬飼佑子