嫌いな天気【文:犬飼佑子】


21 Apr
21Apr

突然ですが、嫌いな天気はありますか?好き、ではなく嫌い、です。


私は、あります。


高校時代、私は陸上部で長距離を専門に走っていました。高校3年時には、県選手権の5000mで優勝、四国選手権にも県代表として出場しました。


とか書いたら「わー!すごーい!」とか思ってくださる方が少なからずいるかと思いますので、からくりを説明しますね。


その年の県選手権女子5000m、出場2人!!四国選手権(各種目に各県4人出場、つまり16人中)13位…。


徳島県というところは、人口が少なく(競技によっては)普通の子が3年間真面目に部活に打ち込むと県大会で優勝できたり、四国大会やら全国大会に進めるという地域なのです。


他都道府県では県大会の前に地区大会があると聞いてびっくり!「県大会出場」が名誉なこと、という地区もあるようですね。


さて、そんな私は高校2年生の時、阿波踊りと並ぶ徳島名物の郡市対抗「徳島駅伝」の選手に選ばれました。中学3年の時からですから、3回目の出場です。 


いや、ほんとに、駅伝としては世界で3番目の走行距離だし、オリンピックランナーも輩出している伝統ある大会なんですよ。


時期は新年。毎年1月1日はニューイヤー駅伝、2~3日は箱根駅伝、4~6日は徳島駅伝なんです。これは徳島県の長距離ランナーの常識です。


出場が決まると自分もですが家族がね、喜ぶんですよ。お婆ちゃんとかが「孫が徳島駅伝走るんです」とかちょっとご近所さんに自慢できるんですよ。


そりゃ、たまにいるトップ選手はニューイヤーとか高校駅伝とか箱根走ってすぐの時期だし、もうちょっとしたら都道府県対抗駅伝もあるので連戦になるので大変かもしれませんが「普通の子」にしたら気合い入れる大会なわけです。晴れ舞台。しかも、その時私が走る予定だった区間はエース区間でしたしね。


高校2年生、来年は大学受験もあるし、最後の徳島駅伝と思って迎えた大会当日、忘れもしない1月5日。


大雪のため、大会史上初の中止。


泣きました。


今なら選手の安全確保であるとか、様々な事情を察することができるのですが、当時は半径30cmほどでしか物事を考えられなかったので、「なぜ?」と、納得がいかなかった。


自分が怪我をしたとか、ゼッケンを忘れたとかなら走れないのは受け入れられるのですが、大雪のため中止…。


努力は必ず報われる(キラリン!)と思っていた「普通の子」のメンタルはやられてしまい、当時私の周りにいた人達にはご迷惑おかけしました。


かわいそうな私を察しろ、こうなったら絶対来年の徳島駅伝走るぞと、受験生にも関わらず中途半端に部活を続け、合宿所に勉強道具を持ち込み、今思えばかなり腫れ物だったと思います。反省しております。ごめんなさい。


と、いうわけで、はじめは走れなくなった時のことを思い出すから、今ではその後の黒歴史を思い出すから。

今でも雪が嫌いです。


「台風のため阿波踊り中止」のテロップが流れたとき、真っ先に頭に思い浮かんだのは、


このままでは川人が壊れる。


でした。


2年前に研修のため上京した時に「黒板に『つくえ』って書いて『つくえかいたよ!』って叫ぶ映画が撮りたい。」(←「ぞめきのくに」の原型)と川人から聞いていた私は、このままじゃこの人は1年くらい腑抜けになって使いものにならないのではないのか、台風が大っ嫌いになって台風のたびにしばらく泣くのではないか、と思ったのです。


それは、させたくないな。


これはうちの母も同じことを思ったらしく、「阿波踊りが中止になって、映画がどうなるかわからない」と泣きながらかかってきた電話を切って「ちょっと2、3日子どもを頼むよ。川人のとこ行ってくる。」と言ったら二つ返事で引き受けてくれた。「あんたの徳島駅伝のとき思い出すけん。」と。


(当時はご迷惑おかけしました。)


結果、この前の徳島4K映画祭で「ぞめきのくに」を観ての感想だけど、多分彼女は特別に台風が嫌いにはなってないのではないかな。だって、こんなに素敵な作品に仕上がった。


もちろん、好きではないとは思うけど。

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